「もしもし、ごめんねー。とりあえずやっぱり来月も全バラシでさぁ」
はぁ。口からは気の抜けた返事しか出なかった。
仕事相手の言い訳っぽい説明が流れる。そして最後に。
「……じゃそういうことだからさ、ごめんね。龍さん。こっちも休業するけど、仕事入ってきたら即連絡するから、じゃまた。元気でね」
電話の切れたスマホを見る。あ、妻にLINEしよう。
まじかー 仕事なくなった―。……いや、やめておこう。返事は決まっている。
「出稼ぎしてんのに! 仕事無いってどういうこと!」。火に油を注ぐだけだ。
かわりにTwitterでつぶやいてみる。「うーむ、仕事がない……」。
行き場のない気持ちを少し発散すれば、何かがどうにかなるだろう。
まあ、これまで、何かがどうにかなったことは無いが。
と思っていたら、なんと!。
地元岩手の知り合いから『隣町でライターを募集している』という情報が届けられました!。うれしい! 持つべきものは中年の友!。ありがとうT氏。
早速応募し、こうして記事を書かせていただくことになりました。
テーマは、「にんにくを使用したお菓子の食レビュー」。
うん、そう、書評と映画、時事ネタとニュース原稿、小説と脚本でした、僕。
はっきり言って、初体験。
青森県田子町。
十和田湖に行く時に必ず通った町で、ケーブルテレビが町内を網羅し、なんとなくだが町民の方達はのんびり屋さん。そして、にんにくが特産品。テレビで何度となく取り上げられ、大きさと美味しい味は、食べた事が無くても知っている人がいる、というくらい有名だ。
その『にんにく』を使ったお菓子が届いた。
ガーリック オブ ザ ガーリック。にんにく界のキング・オブ・キングス、田子にんにくを使用し作られたお菓子が、この箱にどれだけ入っているのだろう。
期待に胸を膨らませながら、まずはじめに僕は換気扇のスイッチを入れた。
もちろん強で。
そして、開封の儀は速やかに。
そして、箱の中には6点ものスナックや加工品が!。
太っ腹! 田子町さん太っ腹すぎるよコレ! ありがとう!。
このご時世、正直言って都会に優しさは無い。皆無い。皆無だ。
箱を開け、ふうわりと鼻の先を掠めたのは、懐かしき北東北の果てに、きつと、いつだらうと流れてゐる、人の優しさだつたのでせう。
そんな明治文学の一文が唐突に浮かぶくらいうれしい!。これでしばらくは食うものに困らない。
まずは一品目。
元気もりもり にんにくひねり揚げ
実直さがストレートに表された、勢いあるフォントでドドーンと訴えるネーミング。
購入した人は、元気もりもりになりたい人だろう。。
タイトルはぜんぜんひねっていない。ということはひとまずちょっと脇に置いて、すぐさま丁寧に包装された小袋を開け、食べてみた。
袋を開けると、にんにくの匂いがブワーッと!……ん?。
意外に香りはマイルド。
口に入れた触感は、まさしく『揚げおかき』。
サクっとした食感と香ばしさが心地よい。
にんにくは、何度か噛んでいると味わいが感じられ、鼻から息を抜けば香りも抜けた。
飲み込んだ後には、ほんのりと口の中に後味が広る。
おいしい。
おかきの食感とにんにくパウダーの後味がクセになる。
あっという間に一袋完食してしまった。
田子町の人達は、きっとこれで元気もりもり。夜だってもりもりなのだろう。
今回、ライティングをするにあたり、田子町のことを少し調べてみたら、2016年に経産省が出した少し古いデータで、興味深いものが出てきた。
出生率1.48。
1人の女性が一生のうち何人の子供を出産するかという割合の数で、田子町は青森県で上位だった。
にんにくを食べ、眠れぬ夜を過ごすと子供が生まれる。
田子の熱い夜を体現した、まさしく夜のお菓子なのかもしれない。
そう思ったら、あやかりたくなり、次の一袋を開けてしまった。
きっと、明日は僕も元気もりもりになっているだろう。ふふふ。
そして、次はこれ。
にんにくみそ さきいか
元気になろう!。と書いてある。これで今日は元気の二乗が決定した。
新型コロナウイルスという見えない敵に仕事を奪われ、次のオーディションと、書き物のコンテストに細々と望みをつないでいる40代には、今一番必要なものだろう。
「まったく無駄だ」という意見もあるかもしれないが、おっさんにこそ元気は必要なのである。社会システムにはめ込まれ、馬車馬のように鞭うたれ、あれやこれやと急かされて生きる若人に、人生はもっと生きたいように生きられるぞと、楽しいぞと、伝えるために元気は必要なのである。多分。
そして、さきいか、である。
にんにくの香りがブワーッと!。お……ん?。確かに開封時には感じた。
しかし、いかんせんイカの香りが、そう、イカ臭が強い。
この、時代を超え酒のアテとして愛され続けるさきいか。それににんにくを仕込むのはとても良い発想だと思う。だがいかんせん、イカの存在が強く、口に入れた時に、にんにくの存在を感じ取るのは、なかなかに難しかった。順序で言えば、イカがファースト、次が味噌、そしてにんにく。そう!イカファーストなのだ!。
美味しいさきいかだ。きっと手間もかかっていて上等な部類に入る。
酒の飲めない下戸な僕でも分かるくらいだ。
だが、にんにくみそとでっかく銘打っているから、これを購入する人は、にんにくファーストであって欲しいんじゃないだろうか?。封を開けた時に「なんでゃこれ?(笑)」と言えるくらいに、にんにくを期待してしまうのではなかろうか?。
少なくとも僕はそうだった。
イカと味噌、そこににんにく。
僕は元気になりたいのだ。
ギンギンになってコロナを吹っ飛ばしたいぜ。
美味しい だからもっと欲しいぜ モア ガーリック
美味しい だっておっさん仕方ない モア ガーリック
ダサいロックバンドの売れない歌みたいになってしまったが、楽しい酒の席にあれば、きっと元気になること受けあいの一品だろう。まずはキミの舌で確かめてほしい。
三品目があらわれた!
田子銘菓 みろく饅頭
僕は甘い。甘い男だ。酒が飲めないからじゃない。和菓子が好きだからだ。
まんじゅう。なんと甘い響きだろう。
幼い頃は「うなぎあたま」と読んで、祖父に笑われたこともあるこの和菓子。
とにかく中のあんこが好きなのだ。10個入最高!。
ポリフェノールたっぷり黒にんにく入り、と書かれている。
きっと、あんこに練り込まれているのだろうと予測し、まずは一つ。
箱の中身が9個になってしまうが仕方ない。だって食べなきゃ味わかんないからさ。
唇に触れる皮表面のしとっとした感触。
それをグッと噛み破り、その先にある乾きのある皮の中身が、ふうわりと歯先に当たり始めた。そこで顎の動きを止めてしまいたい衝動に駆られる。
だめだ。ここで止めちゃだめだ。
饅頭は、皮とあんこを一息に口の中に包み込んで、ぐっぐっと噛みしめるた時に生まれる、魅惑のハーモニーを楽しむ瞬間が至福なのだ。
遠慮なくいかねばならない。
歯が皮を突破し、あんこに触れた。そこから広がった甘いかぐわしい香り。
うむ、まぎれもない饅頭。
その時、鼻腔にパヤっと香った匂い。そう!にんにくだ!。
甘さに埋もれながらも、味の広がる最中に、さりげなく主張してくるあたりが小憎らしい。
うん! 美味い!。
しかも、カラダの抗酸化と溜まった活性酸素を無害にしてくれる作用があり、色々な生活習慣病の予防にも役立つポリフェノールが、たっぷり入っているというのだから、これもまた元気になること間違いなしだろう。
こうして、3種のお菓子を楽んでみたわけだが、バラエティに富んだ加工を施しても、必ずどこかに香りや味わいをしっかりと感じられた。
もっとたっぷりと含まれているほうがいいかな? と感じる時もあったが、それは個人の好みの範疇として構わないだろう。
なによりも、これから数日は、にんにくから元気をもらいながら、都内で暮らすための対策とできることはとてもうれしいことだし、遠く600km以上離れた田子町から、丁寧に届けられたお菓子の味わいは、明日も何かやってやろう、頑張ってやろうと、思わせられる。
故郷の食文化は本当に偉大だ。バンザイ!。
私が記事を書きました。
都内で俳優、写真家、作家、映画監督として活動しています。 2020年1月に新たなステージを求め起業。WEB系の広告映像制作会社を経営中です。出身は岩手県二戸市。都内での活動開始前は、地元岩手にてNHK盛岡放送局の岩手県北地域通信員を勤め、撮影および取材活動にて北岩手を走り回っておりました。ライター経験は、WEB系として企業系サイト、ブログ、SNS、映画レビューの寄稿。報道はニュース、時事ネタ、天気等。ほかに、小説、映画脚本、舞台脚本など。見ていただき、聞いていただき、感動していただく。日々、そう考えながら、喜びあるコンテンツを生み出すべく、表現活動を継続しております。